勝算=勝てそうな見込み。それは紛れもなく、他者が算段してくれるものでも天からのギフトでもなく、自らが組み立てはじき出すものだと、本書を読んで納得させられた。

エンタメに携わっている人、ビジネスの世界に身を置いている人にとって、気づいてそうで気づけていない貴重な答えが物語の中に敷き詰められた本書。著者本人が歩んできた轍の中からの気づきだからこそ、リアリティと重みがある。

具体的なメソッドが書かれたビジネス本なら、今日から、いや、今すぐにでも取り組むことができる。一方、本書は著者である前田裕二の「人生の勝算」についての概念が語られている。にも関わらず、今すぐにも実践したくなる。

著者が語る「人生の勝算」とはいったいどんなものだろうか……?

人生の勝算 (NewsPicks Book)
前田 裕二
幻冬舎 (2017-06-30)
売り上げランキング: 608

今、最も注目される若き起業家が生きていくための路上ライブで身につけた人生とビジネスの本質をすべて明かす―。

SNS時代を生き抜く為に必要な爛灰潺絅縫謄瓩箸浪燭。
SNSの次の潮流である、ライブ配信サービスの最前線はどこか。

アーティスト、アイドル、モデルなどの配信が無料で視聴・応援できる。そして、誰でも配信者になれる。画期的な仮想ライブ空間の「SHOWROOM」を創り出した前田裕二の全思考。

本書は、「経営はストリートから始まった」というプロローグにはじまり、「第1章 人は絆にお金を払う」「第2章 SHOWROOMが作る新しいエンターテインメントのかたち」「第3章 外資系銀行でも求められたのは『思いやり』」「第4章 ニューヨーク奮闘記」「第5章 SHOWROOM起業」「第6章 SHOWROOMの未来」「エピローグーコンパスは持っているかー」と続く。

本書でも書かれているとおり、第1章・第2章はエンタメに携わる人は押さえておくべきポイントが示されている。第3章以降では、著者が現在の立場に至るまでの轍とSHOWROOMの未来が語られている。

まるでフィクションの物語を読んでいるように読み進められる本作。ストーリーを追いかけながら読み進める要所要所に、エンタメやビジネスに役立つ考え方や著者なりの解が示されている。

本書で得た学びを大きく2つに絞るとすると、ひとつ目が「現代のエンタメのかたち」。ふたつ目が「頑張る=見極めて、やり切る」という考え方の2つ。

現代のエンタメのかたちは、完全に旧態依然のものから変わってしまった。周りを見渡せば、まだまだ気づいていない人も多いのが現状だが、完全にその姿を変えている。

お金の流れがどう変わったのかを明示すれば一目瞭然だけれど、時代の潮流で感じることも容易だ。
大衆は知らないものを「無」と扱う。「完全に姿を変え切る」までは時代の変化に気づかない。だから多くの人にとって、何ら変わらない景色が続いているように錯覚している。

が、事実、エンタメの世界は、急加速で変化している。

斬新なアーティストが登場したとか、新しいジャンルの表現が登場したとか、そういった変化ではない。エンタメの在り方そのものが、根底から変化しているのだ。

本書の第1章・第2章では、その変化を先取りした読みが語られている。というのも、今この書評を書いているのは、本書の出版時からすると未来。そして、昨今のこの劇的な変化を的確に読み当てているのが見て取れる。

何かを表現したり物やサービスを提供したりするにあたり、必要不可欠なのがストーリー性。インタラクションがクオリティとなる価値観。これらは、今日、エンタメに携わる人たちでも、実践できている人はまだまだ少ないと思う。

本書を読み、すぐにでも実践せねばと、焦燥の思いに駆られた。

あと、「頑張る=見極めて、やり切る」という考え方。やり切ることばかりを意識し、見極めるという行為をスキップしている人は多いはず。心がけてはいるものの、徹底的にやっているかと問われれば、目を伏せてしまいそうになる自分がいた。

本書には著者の努力の様子がたくさん語られているものの、こういった「見極め」などのポイントはとても冷静で論理的。こちらもすぐに取り入れ実践していかねばと、後頭部を鈍器で殴られたような思いだった。

著者・前田裕二は『AbemaTV』の『株式会社ニシノコンサル』にも度々出演している。ビジネスの相談者に対して、コンサルタントとしての立場でアドバイスを送る。その姿勢は見ていてとても清々しい。周りの誰よりも誠実に声に耳を傾け、瞬時に最適解を探し出し、懇切丁寧にアドバイスする姿。それが、人望の厚さを物語っている。

本書ではSHOWROOMが世界一に昇りつめると宣言されている。きっと彼ならやってくれる。そう思わせられる気迫が、著者にはある。ビジネスのヒントを得ながら、前田裕二の轍と魅力に触れられる一冊です。