本作のタイトル『世界は恋に落ちている』と、そして本作のラストのワンフレーズ。
そこがシンクロした瞬間、胸の中から甘酸っぱさが一気に飛びだした。

恋愛って、無敵だね。ドキドキするって、最高だね。

恋に落ちている本人は、想いが伝わらなくてもどかしくなったり、片思いや失恋に苦しんだりと、とにかく感情が暴れまくって落ち着かない。

でも、それをドラマとして観る側は、片思いや失恋、気持ちを伝えるまでのプロセスや気持ちを伝えたあとの展開など、どこをどう切っても恋愛って絵になるもんだから、ドキドキする。

今はもう、キラキラした恋愛をする時期を過ぎた人でも、昔の自分に戻ってドキドキできたり、作品からもらったドキドキを、日々の栄養に変換したりと、やっぱり恋が持つ力ってすごい。

あと、恋って、"人"だけにするもんじゃなかったりするし。
何かの作品に恋したり、自分の夢に恋したりしている人だっていると思う。その根底に溢れている感情そのものが、きっと恋って言うんだろう。

大人ももっと、素直にドキドキすればいいのにな。
歳を重ね、経験が豊かになったもんだから、全部、思考の中で試してみて答えを出してしまう。
で、シミューレーション上、不満足な結果に終わるものには蓋をして、動きもしない。

不満足な結果が見えていても、満足に変えてみせる!
って情熱、みんなが持っていたはずなのにね。

素直に恋して、素直にドキドキ。そうすれば、こんな素晴らしい世界があったなんて、と、いつだって新しい世界に出会えるはず。


世界は恋に落ちている (角川ビーンズ文庫)
香坂茉里
KADOKAWA (2018-07-01)
売り上げランキング: 68,544
吹奏楽部の仲間で、クラスメイトの要に片想い中の岬。告白なんてできず、親友のつぼみがよき相談相手。けれど、夏祭りをきっかけに、つぼみも要への想いに気づき、岬に打ち明ける。おたがいにがんばろうと決める二人。だって「「好きだから」」そんななか、後夜祭の屋上で、要に想いをぶつけるのは…!?駆け抜けた青春に、忘れない、忘れられない、輝く1ページ―CHiCO with HoneyWorksの鮮烈なデビュー曲、最高の小説化!

『HoneyWorks』が手がけた恋愛小説『世界は恋に落ちている』。通称・ハニワで知られるHoneyWorksは、楽曲・動画などを制作するクリエイターユニット。本作は、CHiCO with HoneyWorksのデビュー曲が小説化されたもの。

本作は、吹奏楽部の仲間でクラスメイトである登場人物の岬・つぼみ・要の三人の視点が入れ替わり、物語が進行する。
クラスメイトからは、既に付き合っているんじゃないの? と勘違いされるほど、自然な関係性を持つ、岬と要。ただ、本当は好きを伝えたいのに、「誰よりも仲のいい友だち」みたいな関係性を崩しちゃダメだと、胸にその想いを秘める岬。

岬の親友つぼみは、要に恋する岬の相談相手。と思っていたところ、つぼみ本人も要に恋をしている自分の気持ちに気づいてしまう。

三人の関係性を保ちながら、それでも好きを伝えたい。そんな三人の恋はどうやって展開し、どうやって結末を迎えるのか!?

あらすじだけを読むと、シンプルな恋愛小説ね、と思う人もいるかもしれない。
でも、恋愛に欠かせないのって、没入感よね。どれだけその恋に没入できるかが勝負。そういう意味では本作、三人の気持ちに成り代わり、心配したりヤキモキしたりハラハラしたり、しっかりとその世界に没入させてくれます。

考えてみると恋愛って、基本的には二人が結ばれるもの。だから、恋愛の物語に三人目や四人目の登場人物がいるってことは、絶対に拗れる方向に物語が進むよね。だって、最終的には二人で帰結するものなんだもん。

と、当たり前のことを当たり前のように語ってみますが、本作を読めば、当たり前のことを当たり前には受け止められない自分に気づきます。登場人物のすべてが幸せになればいい。誰ひとり悲しまず、ハッピーになって欲しい。

本作の登場人物たちがどのように帰結するのかはネタバレになるので書きませんが、僕は常にそう願い物語を読みますし、本作だって……。

とかく設定を複雑にしてみたり、異次元やファンタジーな物語が多い昨今ですが、真正面から恋愛のドキドキに触れられる作品っていうものは、いつの時代も輝いていて欲しいもの。本作がまさにそういった存在だな、と感じながら、今日もドキドキして生きようって、栄養をもらえる作品でした。