音楽を聴いたり本を読んだり偉人の名言に触れたりするたび、「生まれたからには楽しく生きたい」「一度きりの人生、一秒も無駄にせず生きたい」と、何度も思い、それでも現実に直面し息苦しさを覚え、気づけばいつも振り出し。そう、まるで人生が二度あるかの如く、ダラダラと無駄に日々をすり減らしてしまっている。

そうなんだよなぁ。人間、死んだら終わりなんだよなぁ。

常識と当たり前に縛られ、自分には自由がないと嘆き、さもそれが人間だよと言い訳せんばかりに極小の自由にしがみつき、昨日と似たような今日、今日と似た明日を過ごす僕ら。
それが罪であるかのように、不毛な毎日を打ち壊すこともなく、それに従うことこそが生きることだと、逃げ、挑まず、自分で自分を言いくるめる。

変えようと思えば変えられるのに。
変わろうと思えば変われるのに。

きっと、気づいて動いた人から、世界は変わる。毎日をドキドキしながら生きる権利は、すべての人に与えられた権利だ。だって、目の前のことにドキドキするかしないかは、自分が決めることだから。

世の中は閉塞感に包まれているけれど、こんなに選択肢の多い時代は、今までになかったはず。
そう、道なき道が、腐るほどたくさんある。

あとは、一歩を踏み出すかどうか。
金の呪縛、時間の呪縛、常識の呪縛を大破せよ。

魔法のコンパス 道なき道の歩き方
西野 亮廣
主婦と生活社
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漫才師、絵本作家、イベンター、校長、村長、ついには上場企業の顧問にも就任しちゃったキングコング西野が語る「新しい仕事の広げ方」、「本当のお金の話」、「常識の覆し方」、「エンタメの仕掛け方」とは? 肩書きを自由に飛び越える異端児の型破りな実例満載! 世間からハミ出す人のためのビジネスヒント集

日頃からyoutubeをよく観る。そのyoutube界に、お笑いコンビ「キングコング」の梶原雄太がやってきた。キングコングの二人と僕は同い年。芸人になった僕の知人とも彼らは同期。その名前が世に出はじめた頃から、彼らのことは何度も聞かされていた。

梶原雄太がカジサックという名前でyoutube界に殴り込み。やはり一線で活躍する芸人のトーク力やノリやネタはズバ抜けていて、それがyoutubeのトンマナにマッチしているかは別として、他のyoutubeたちとは明らかに違うオーラを感じたし、ファンになるのに時間はかからなかった。

で、「カジサックチャンネル」とは別でキングコングが配信している「毎週キングコング」。フリートークで構成されているこの番組。自ずと西野亮廣にも興味が湧く。湧くどころか、人柄や考え方、彼の多動力に圧倒されはじめた。そして、本作を手に取る。厳密に言うと、彼の絵本が話題になったとき、「えんとつ町のプペル」は購入していたけれど。

僕は常々、お笑いというのは最も高尚な文化だと思っている。何をするにもユーモア無しでは存在し得ないと思うし、人を動かす・物を動かす・事を動かすことに最も必要なものは、感動や興奮ではなく、笑いだと信じているから。

本作は、ビジネス書。でも、他のビジネス書とはまったく異質のものだ。
なぜなら、彼が芸人であり、あくまで本職は芸人であり、だから、お金を目的として成り上がった人の成功談や、地位や名誉を手に入れ、今尚、その地位をズンズンと高めているような成功者のノウハウなどが書かれたものとは、そりゃ必然的に異なるはずだ。

彼がなぜそのように考え、どういう思考をベースに人生設計について考えるのか。そしてクリエイターとして創作とどのように向き合っているのか、さらには創作したものを世に出すために何をしなければならないのか、なぜそれをしなければならないのか。彼の目線から、それらがたっぷりと語られている。

で、ふと思った。
普段、ビジネスの場面では、堀江貴文や西村博之の価値観に触れるのが好きで、ビジネス以外の場面ではお笑いや音楽や小説が好きで。両極端の存在。その点と点を線でつないでくれた、と。

本作のタイトルは『魔法のコンパス〜道なき道の歩き方〜』。
そう、今の時代、過去の慣例通りに生きていては、いつか自滅する。無邪気に日本の未来を想像してみるだけでも、やせ細り弱った日本の姿は容易に想像がつく。しかし、今の時代は武器で溢れている。そう。意思やら意志やら行動やらを武器に変えることに、多くのお金も多くの時間も費やさない時代になった。

そう考えると、これほど恵まれた時代があっただろうか、とさえ思う。

ただ、その恩恵を受けるためには、金・時間・常識に縛られていてはいけない。それらの呪縛から己を解放してやらないとダメだ。本作には、その呪縛から抜け出すためのヒントがたくさん書かれている。

ただ、本作を読んだとしても尚、こんな風に言う人はたくさんいるはずだ。
「でも、生きるためにはお金がいるし」「仕事に追われて自由な時間なんかないし」「家庭を持って守るものができたら、そんなリスクは冒せないし」「どうせ彼は芸人で成功したから、同じように多方面でも成功できるんでしょ」って。

その理屈もわかる。わかるんだけれども、「やってみる」くらいなら誰にだってできるだろう。「やってみる」程度のことを咎める要因はないはずだ。そして何より、そうやって諦め面している人の「やってみる」にかける情熱が、西野亮廣よりも圧倒的に弱いはずだ。だから僕らは何も変わらない。そして、彼はどんどんと変わっていく。

現状維持という言葉が大好きな数多の人たち。変わる・変えるリスクよりも、その場に居続けるほうが安定しているからと、定位置で足踏みする。

でも、忘れちゃいけない。今の世の中は、過去に類を見ないほど、高速に進化している。時代は高速で前に向かって進んでいる。ということは、定位置で足踏みすることは、過去に流されていることを意味する。それに気づいていない人が、あまりにも多い。

これからの日本のことを考えると、子どもたちが不憫でならなかった。大人たちが無責任に足踏みばかりをしているしわ寄せが、すべて子どもたちに降りかかってくる。子どもたちの笑顔は、生きにくい日本という国で、どんどん曇っていくだろう。そう思えて仕方がなかった。

でも、本作の最終章「仕事になるまで遊べ」には、こう書かれている。
今後、親が子どもに言うのは「遊んでばかりいちゃいけません」じゃなくて、「仕事になるまで遊びなさい!」だね。どうやら面白い未来が待っているよ。
と。

そうだった。今の時代には、武器が多い。今を楽しくするための道具で溢れている。大人が子どもたちにやってあげられることは、もはや何ひとつなくて、やっちゃいけないことがたったひとつ。それは、彼ら彼女らから武器を奪うこと。それは彼ら彼女らの未来を奪うことだから。

生き方に新しい角度から光をくれる本作をぜひ。