命さえあれば、あとはもうどうだっていい。

不本意な理由で命を落とさなければならない。それほど悲しいものはない。
不本意な理由で命の危機を感じたなら、どこまでもどこまでも逃げて欲しい。

人が人である限り、イジメはなくならない。それは学校のなかだけじゃなく、社会にも蔓延っている。多くの人と関わり合って生きていくこの社会のなかでは、何がイジメのきっかけになるかすらわからない。

イジメが多様化した昨今、攻撃は暴力だけに留まらない。
集団生活において、その存在を無いものとする、無視という攻撃もあるだろうし、このデジタル社会、SNSの世界でコミュニティから爪弾きにする攻撃もあるだろう。

学校でイジメに遭っているなら、無理して学校に行かなくてもいいよ。そんな方法だけでは救えない、複雑な時代になっているのは間違いない。

だからこそ、逃げて欲しい。どこまでも逃げて欲しい。奴らが学校の外、会社の外まで追いかけてくるようなら、とことん逃げて欲しい。奴らがイジメをして得る快感と、標的を追い続けるためにかかる労力コストを考え、奴らが割に合わないと諦めてしまうまで、どこまでも逃げて欲しい。

人はみんな、いつか死んでしまうけれど、死んでしまうその日まで、生きていく権利は全員にある。あたりまえのことだけれど、不本意なことが人の命を奪う権利は、絶対にない。

慌ただしい毎日、生きていることすら実感しない瞬間が続く。
でも、命はある。命がある。
偶然か必然か、朝、いつもどおりに目が覚めた今日という一日を、目一杯生きてみたいと思った。


ミスミソウ 完全版 全2巻セット


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「私は家族を焼き殺された――。」
三角草(ミスミソウ)。厳しい冬を耐え抜いた後に雪を割るようにして咲く花。
閉鎖的な田舎町の中学に転校してきた少女「春花」を待っていたのは、壮絶なイジメだった。
せき止められない憎しみに、少女の心は崩壊する―――!!

あまりにも衝撃的過ぎた作品。この作品がなぜ世に生まれなければならなかったのか、その意味すらも問いたくなった。

物語は、壮絶なイジメが続き、壮絶な復讐が続く。
まもなく廃校を迎える中学校。卒業式をすぐ先に控えた時期に転校してきた春花。春花の転校によって、田舎の閉鎖的な中学校、クラスの調和は乱れ、バランスが崩れ、その矛先が春花へと向かう。

目を覆いたくなるようなイジメ、吐き気を催すほどのイジメ、そしてついには家族にまで魔の手は伸び、大切な人まで失ってしまう。

そして、復讐。

鬼と化した春花は、イジメに加担した連中に対し、次々と復讐を繰り広げて行く。そして、物語は後半に差し掛かるにつれ、予想通り、予想外の展開へと突き進む。

イジメを題材にした漫画や小説はたくさんあるし、残酷な描写が続くアニメや映画もたくさんある。本作は読んでいる側の精神までエグッてくる作品だ。ストーリー展開はもちろんのこと、キャラクターの人物描写や悲惨なシーンの描写、わかりやすい人物設定ではあるものの、それが余計に「小さな世界」をそこにつくり上げ、読む側の胸を圧迫する。

本作を読了して今はまだ、読む前と読んだあとで自分のなかで何が変わったのか、何を学んだのか、何を感じたのかをまとめきれていない。それだけに、こんなにも残酷な物語が、なぜ世に生まれなければならなかったのかばかりを考えてしまう。

世界中のすべての人が、不本意な理由で命を落としてしまうことのないように。
大切なものを身近に感じ、大切だと思い続けられるように。

しっかり、生きたい。そう思わせてくれる作品だった。