女の人は、猟奇的だと思う、少なくとも、男よりは。

男が小器用に頭で反応しているときでも、女の人は、心でそれを受け止めて、なんと言うか、グローブなしでボールを受け止めるというか、そう、素手の心でキャッチするから、イタイイタイ。

そのくせ、仮面も上手に被れる。

行きたくもない同僚と一緒にランチに行ったり、そこで楽しそうに笑えたり、キャッキャッ。男からすると、「行かなきゃいいじゃん、そんなの」となるけれど、はたから見ると、仲よさげ。
男の場合だったら、そういうとき、分かりやすいんだよね。過ごしたくもない奴と一緒に時間を過ごす場合、そこには何らかの利害が絡んでる。

でも、分からん。女の人が、それする、メリットが。

たとえばこう思う。朝、家を出る。今日、暑い。電車が来た。混んでる。残業を課せられた。鬱陶しい。徹夜明け。眠たい。定食が運ばれて来た。味噌汁がちょっとぬるい。男女が同じ状況の下に置かれたとき、やっぱり女と男で、感じることって違うのかなって?
朝、家を出る。今日、暑い。たったこれだけの中にも、男女としての違いがあるんだろうかって。

きっと、あるんだろうな。

ということは、生物の物語は大きくわけて二パターンあるということになる。
男版の物語と、女版の物語。

人間は人生の三分の一を睡眠に費やしているとは、よく聞く話。
じゃあ、あれだね、女版の物語だったら、化粧する時間と化粧を落とす時間に、どれだけ費やしてるのかも、重要なポイントになるかも知れないね。


はじまらないティータイム (集英社文芸単行本)
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【第31回すばる文学賞受賞作】4人の過剰な女たち。あなたは誰に共感? 努力で「できちゃった略奪婚」した里美。その結果、離婚の憂き目にあった佐智子。そんな彼女を心配し、探偵活動を始める伯母ミツエ。その娘で不妊に悩む奈都子。女たちは対立しながら奇妙な友情を育む。

原田ひ香という人の本は、はじめて読んだ。
文体が、すごく好きな、サバサバ感。

この物語に登場する四人の女性たち。これがもし、四人の男性たち、だったとしたら、こんな風な世界観で、物語を描けないだろうなって感じるくらい、女性独特の世界が描かれている気がした。

女性が主となる恋愛小説とかでも、女性目線、を知ることはできるのかも知れないけれど、なんとなく、そういう作品に出てくる女性たちって、男でも知ってる女性が多い。

のに、本作に出てくる女性たち。彼女らの仕草、考え方、感じ方、行動、立振舞い。それらすべてが、男が知ることのできない、なんというか、具体的なものだから、何気ない描写も、すごく興味深い。

女の人って、こういうところで怒ったり、泣いたり、笑ったり、悔しがったり、奇怪な行動に出たり。
そんな一部始終が見られるのに、ボテッと重たくならないのは、原田ひ香の文体がそうさせているんだと思う。
たとえるなら、ちょっと細めのゴシック体のフォントみたい。

本作のラストは、個人的に、大好きな感じ。
なぜ、このタイトルになったのか、を、しっかりと紐解いてくれる作品。
読み終わったあと、構えた本を数十センチ、自分から遠ざけて、にんまりと笑いたくなる作品。
こんな作品だったら、いくらでも読んでみたい。
女性が本作を読めば、まるで自分事のよう、と感じるのだろうか。興味深いところだ。

話を大きく広げ過ぎずに、小さくまとまった世界の中で巻き起こる物語も、素敵だな。
ちょっと細めのゴシック体の物語を、あなたもぜひ。