「メルセデスを、はじめませんか?」

たどり着くところが、ベンツ。行き着くところが、ベンツ。そういった、ひとつの目標地点・到達地点である高級車ベンツとしての訴求ではなく、299万円からのBとして、メルセデスという入口を謳っている。

そう、メルセデスという、入口を謳っている。

CFのイメージも、おっ、この層に訴求するのかと、やや驚きもあるスタイリッシュな作風で演出。

イメージチェンジとか、刷新とか、脱皮とか、印象を変えるのって、とても難しい気がする。いや、単に見栄えやらの表層部分を変えるのなんてのは、いとも簡単なんだけど、守らねばならない何かを残しながら変える、否、変わるって、とても難しい。

それは、高級感であったり、豪華さであったり、いわゆる、以前から続く、バリュー。メルセデス・ベンツのすごいところ。そうやって、あくまでイメージは変えずに「新しい高級」をつくり続けるところ。

職人たちの愛情と、伝統があるから、やってのけられるんだろうなぁ。

1995年のメルセデス・ベンツ日本の一連のキャンペーンでは、ベンツという表記を一切やめ、「メルセデス」という呼び名で展開。

そこでは、以前から続く高級のイメージは変えずに、メルセデスという新しい高級が、生まれる。

ベンツと、メルセデス、呼び名は違えど、メルセデス・ベンツ。

そこにブランドとしての誇りを感じざるを得ない。単純に字面だけを見ると、苗字で呼ぶか、名前で呼ぶかぐらいの違いでしかないんじゃないのと、しごく安直に思われてしまうかもしれない。

でも、広告の視点から見ると、それはすごいこと。すごい大胆なことであり、もしかすると、ブランド支持者からの反感だって、予想される。

それを見事にやってのける。そこには、ベンツに携わる人間たちの、メルセデス・ベンツへの絶対的な信頼が伺える。

その当時のコピーが、これ。

「歳はゆっくりとればいい。」


そして今回はこの層に訴求かメルセデス、CMを見てそう思ったわけです。

人々の出口に待つベンツだったものが、メルセデスという入口を提示する。そこには再び、新しいメルセデスの可能性とストーリーと、あと挑戦が感じられる。

だから、誘うわけだね。

「メルセデスを、はじめませんか?」